人権を伝える

この数年、人権啓発ラジオのシナリオ制作に携わっている。
チーフライターとして、他のライターの原稿もチェックするので、終わりまで気が抜けない。
春に始まり、やっと10月、最後のルビ入れ原稿までアップし、仕事が終了した。
同和問題、北朝鮮拉致問題、障がい者、高齢者、女性、子ども、働く人、性的マイノリティ、ハンセン病、ホームレス、インターネット、災害時の人権など、テーマは幅広い。
普段は出会う機会のない方たちと、取材を通してお話を伺ってきた。
私が全然知らなかった世界のことを、まず自分が理解して、当事者の思いに寄り添い、中学生が耳で聞いてわかるような言葉に表現する。
単に取材内容を伝えるのではなく、ラジオ番組の主催者である自治体の意向を踏まえた内容にしなければならない。人権委員会との協議は毎週行われ、推敲を重ねていく。
ネットで検索できる情報をひたすら集め、本があれば取り寄せて読み、インタビューの文字起こしもするので、元となる資料は数十ページに及ぶ。
それを900文字、5分間のシナリオに仕上げるのだ。
短い文章で誤解を受けない表現をするのが難しく、神経もすごく使うけれど、この仕事は私の人生を豊かにしてくれた。ありがたいご縁だ。
東北で生まれ育った私は、部落差別のことを全く知らなったし、考えたこともなかった。
ハンセン病の知識もゼロだったし、重度障がい者の方にも会ったことはなかった。
多様な人の生き方に触れ、視野が広がり、ちょっと優しくなれたと思う。
取材で出会う方々は、障がいを乗り越えて活動をしたり、社会の課題を前向きに解決しようとしている人ばかり。
地道に、ひたむきに、誰かのためや、自分の人生を切り拓くために行動を続けている。
人権とは、誰もが生まれながらにして持っている、人間らしく、自分らしく生きることのできる権利のこと。
つまるところ、「みんな違ってみんないい」ってことだ。
人は無意識に「あたり前」という枠をつくり、はみ出したものを否定する。
「正しさ」は、暴走すると人を追い詰める。
「みんな」というモンスターが、人の命を奪ってしまうこともある。
本当に強くて優しい人とは、そんな怖さを知っている人だ。
12月には今年の放送もオンエアされる。
一人でも多くの人に届きますように。